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「今、こんな季節を迎えている」と気付かせてくれる 京都・西陣で庄本彩美さんがつくる「円卓」のお弁当

2024.02.05 / 高村学
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京都・西陣でケータリングやお弁当の販売を手掛けている「円卓」の庄本彩美さん。2017年から「円卓」として活動を開始して、2021年には町屋を改装したアトリエを構え、定期的にワークショップやイベントも開催しています。「京都ではここが3軒目です、光と風が抜ける場所に住みたいと思っていました」と話すとおり、アトリエの入り口にある真っ白い「円卓」の暖簾がいつも風に揺らめいています。

その暖簾をくぐるとアトリエとキッチンがあり、さらにその奥には美しい庭が見えます。樹齢100年を超える大樹が見える庭では、レモンバームやレモングラス、タイムといったハーブ類、そしてまだ植えたばかりのゼラニウムなどを育てています。庭で摘んだハーブは料理に使い、たまに花器に活けることもあります。よく見れば、アトリエにはいろいろなところに美しい花や植物が飾られています。ここにアトリエを構えてからは季節の移ろいにも敏感になったといいます。

庄本彩美さんは、「野菜は季節の到来を知らせてくれる身近なもの」だと言います。「円卓」のお弁当は、シンプルな和風の味付けにすることと季節の野菜を使うことにこだわっています。野菜の甘みがふんだんに出るように、日本の調味料を使用して調理します。この日いただいた料理も京都の地野菜を使った和え物やおでん、そして白ごはんにお味噌汁です。しっかりとした食感があって、ひとつひとつの食材がとても美味しく感じられます。

「自分のなかに食材のバリエーションがあって、それが網羅できているか考えながらつくります。最終的な着地はもちろん美味しいことですが、色味や食べやすさ、食感も考えながらつくっています。食事をいただいたときに『ああ、こういう季節がきたんだ』と気付かされたことが私の料理のルーツにあります。ですから、旬の食材を口にしたときにそう感じてもらえるように、という思いを込めて料理をしています。今、過ごしている季節にハッと気付くことで、気持ちや感情に変化をもたらすかもしれませんし、そうした気付きは次への活力にもなるのではないでしょうか」。

「円卓」では、京野菜を農家から直接仕入れて販売する振り売りから、柚子や賀茂トマト、賀茂ナスなど、季節ごとに旬な野菜を仕入れることがあります。野菜は熟してから収穫するとどうしても表面が裂けてしまうことがあります。そういった本来は市場に出回らない野菜も好んで使います。採れたては色や味が濃く、庄本彩美さんはこれが本当の野菜の味だといいます。

料理の世界に入るきっかけとして、ある方の影響が大きいといいます。京都在住で料理家の森田久美さんです。「私にとって師匠のような方です。森田久美さんの考え方やレシピは著書で学びましたが、野菜をイノチと捉えています。森田久美さんの著書から、何かあれこれしてやろうと思わなくても、ありのまま対等に関わることで野菜は美味しいということを教わりました。食材をたくさん使わなくても満足できるレシピや、逆に詳しくレシピには書いていなくてもその通りつくったら美味しい料理ができあがったり、不思議な感覚を持ったことをとても覚えています」。

実は、この心地よい「円卓」の内装は、森田久美さんの夫の建築家が手掛けました。アトリエの中心に広いキッチンがあり、庭から光と風が抜けていく空間に仕上がりました。まさに料理をし、円卓を囲んで美味しいものをいただくための空間です。「ただ、2022年の1年間はとても忙しくて、そのころの記憶がないくらいすっからかんになっていました。注文が殺到して、つくってばかりになり、そのころは一度も庭にさえ出られなかったほどでした。それではいけないですし、料理は自分がちゃんと生活したうえで提供するものであるべきですから、今はちゃんと庭にも出て規則正しい生活を送っています」。

「円卓」では、毎年春になるとハーブの寄せ植えのワークショップを開催しています。昨年の春には、大阪のハーブ教室herva(ハーバ)の寄せ植えのハーブティーとクスクスのプレートをつくり、大阪で植物を扱っている「百会(hyaque)」のミニブーケを付けたイベントを開催しました。植物と触れ合いながら、京都・西陣で野菜や食材と真摯に向き合う「円卓」のお弁当を、一度ぜひいただいてみてはいかがでしょうか。「今、こんな季節を迎えている」と、きっと気付かれせてくれるはずです。

撮影:石川奈都子

■円卓
住所:京都市上京区中書町689
お店は普段閉まっています。
販売については「円卓」の公式インスタグラムをご確認ください。
公式インスタグラム @entaku_ayamii

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
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