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「THE FLOWER JOURNEY(編集長の花旅日記)」 栃木県益子町

2025.04.12 / 高村学
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2025年3月、栃木県の益子町へ。現地でアテンドしてくれたのは、益子町と東京で二拠点生活を送る國村周平・果穂夫妻だ。益子町は大正時代に河井寛次郎らとともに民藝運動を推進した陶芸家の濱田庄司が定住した街としても知られている。民藝には、学生時代に京都にある河井寛次郎記念館を訪問したのがきっかけで興味を持ち始めて、寛次郎のひ孫で自身も陶芸家の河井創太さんに滋賀県の信楽町まで取材に行ったこともある。民藝運動は英国土着の陶器文化にルーツがあって、若いころは洋服でも音楽でもブリティッシュスタイルに影響を受けていたから、民藝にも同じようなフィーリングを感じていたのかもしれない。

國村夫妻がまず案内してくれたのが濱田庄司の旧自邸だ。1924年に益子町に移り住んだ濱田が創作の拠点とした場所で、現在は益子陶芸美術館のひとつとして一般に公開している。前庭には大きな梅の木があり、訪れた時はほぼ満開で茅葺き屋根の旧濱田邸と見事に調和しているのが印象的だった。他にも椿や山茱萸が自生しているが、ひっそり柿の木もあった。益子焼のあの独特な柿色は、柿釉という釉薬によって表現しているが、もしかしたらその柿釉に引っかけて濱田が自庭に植えたのかもしれない。

旧濱田邸を後にすると、益子町でもっとも古くて関東ではもっとも大きいという登り窯がある「岩下製陶」へ。六代目の岩下宗晶さんが工房内を案内してくれて、震災の影響もあって現在は使われていない巨大な登り窯も拝見。岩下宗晶さんは、英国のセント・アイヴスにある、英国人陶芸家のバーナード・リーチが開いたリーチ・ポタリーで陶芸技法について研修を受けたそうだ。バーナード・リーチは、ルーシー・リーらも影響を受けた陶芸家で、リーチ・ポタリーは濱田庄司と共同で作ったという。陶芸を通した日英の結びつきは、こうして現在も脈々と受け継がれているようだ。

ランチは「スターネット(starnet)」に連れていってもらった。大谷石を使った建物で、山梨県にある「エヴァム エヴァ ヤマナシ(evam eva yamanashi)」にちょっと似た雰囲気。もともとは馬場浩史が1998年にオープンしたギャラリー兼カフェで、現在はマガジンハウスにいた方がオーナーだそうだ。馬場浩史は、ファッションデザイナーの熊谷登喜男のパートナーでもあったという。

「スターネット」では、益子近郊で採れた旬の野菜を使ったスープや、益子町産のそば粉に天然酵母を合わせたガレットをいただいた。定番のシフォンケーキや数種類のスパイスとドライフルーツ、ナッツなどを合わせたパウンドケーキ、それにオリジナルの山野草茶やオーガニックコーヒーなども提供している。

この日は、大正時代に建てられた古い町屋を改装したギャラリー「陶庫」も訪ねてみた。ちょうど「椿の器考」という展覧会が開催されていて、今成誠一や小野正穂といった作家の花器に椿が生けられていた。益子町には、身の回りにあるもので丁寧に心地よく暮らす、という考えが浸透しているのを感じた。それが益子町の風土を彩っている。

「益子陶芸美術館」
住所:栃木県芳賀郡益子町益子3021
公式IG:https://www.instagram.com/mashiko.museum/

「益子陶芸美術館」
住所:栃木県芳賀郡益子町益子3021
公式IG:https://www.instagram.com/mashiko.museum/

「岩下製陶(古窯いわした)」
住所:栃木県芳賀郡益子町益子3070
公式IG:https://www.instagram.com/koyo_iwashita/

「スターネット(starnet)」
住所:栃木県芳賀郡益子町益子3278-1
営業時間:11時00分~18時00分
定休日:毎週木曜(祝日を除く)
公式IG:https://www.instagram.com/starnet_mashiko/

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
Shungetsu Nakamura
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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura

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