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建築と自然の融合が楽しめる緑豊かな空間4選

2022.12.20 / 岩見光
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1 箱根随一の広さを誇る岡田美術館

岡田美術館は、2013年10月に開館した、日本・東洋の美術品と考古遺品などの文化財を公開する私立美術館です。全5階から成る建物の延べ床面積は約7,700平方メートルで、展示面積は約5,000平方メートルにも及びます。美術館の多い箱根の中でも屋内展示面積としては最大級の広さを誇っています。展示作品が多いこともポイントで、近世・近現代の日本絵画を中心に、陶磁器や和ガラス、漆工品など、常時約450点の芸術を堪能することができます。葛飾北斎や喜多川歌麿をはじめ、日本絵画の巨匠のコレクションも収蔵。

広大な敷地内には、美術館と庭園、100%源泉かけ流しの足湯カフェなど、自然と一体化したアート空間が広がっています。足湯カフェは、風神・雷神の大壁画(福井江太郎氏による12m×30mの大作「風・刻」)の正面に併設されており、足湯につかりながら壁画の鑑賞と飲み物を楽しめます。美術館鑑賞後の疲労回復にもぴったり。

■昭和初期の日本家屋を改装した飲食施設

昭和初期の日本家屋を改装した飲食施設「開化亭」も併設しており、山海の幸を使用したうどんや甘味を味わえます。「開化亭」は、明治半ばにこの地にあった外国人向けホテルにちなんで名づけられました。滝の音を聞きながら落ち着いて日本庭園を楽しめ、内装もゆったりと和の趣を感じられるつくりに。コイの泳ぐ池のほとりに立っており、戸外には緑の木立が広がっています。日常を忘れる静けさのなか、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

■1年を通じて箱根の自然美を味わえる庭園空間

岡田美術館の庭園は、緑豊かな自然林に池や滝などが一体となった美しい空間です。コンセプトは、「〜湧水・樹木の生命力〜 自然の恵みを感じる庭園空間」。自然と人工庭園の調和を重んじて設計されました。庭園の敷地面積は約15,000平方メートル。春は箱根の山々からの雪解け水が流れ込む清流や新芽を眺めてリフレッシュしつつ、ヤマブキやヤマツヅジ、ボタンの花を見て楽しむことができます。夏は水音を聴きながらの森林浴に、ショウブやアジサイ、ユリの花を見ることが可能です。10月下旬から11月中旬は鮮やかな紅葉が見頃を迎えます。冬に見られる薄氷の張った水面は、水墨画や日本画のように静寂な世界を感じさせてくれるでしょう。箱根の自然を堪能できる庭園は、四季折々で景色が変わるので、企画展示が変わるたびに訪れてゆったりする、という方も多いそう。

■「岡田美術館」概要
住所:〒250-0406 神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
※開化亭の営業時間は、11時〜17時(L.O. 16時30分)
休館日:12月31日、1月1日、展示替期間
※渓流散策コースが一時閉鎖のため、現在は庭園の入園料は無料
公式HP:https://www.okada-museum.com/

2 自然を体感できる横倉山自然の森博物館

横倉山自然の森博物館は、高知県高岡郡越知町越知丙にある博物館です。越知町は、植物学の父として知られる牧野富太郎が植物の採集をした場所で、その関係からこの場所に自然史博物館が建てられました。博物館では横倉山を通じて地球の生い立ちや牧野博士が愛した珍しい植物、そして越知町の歴史を学ぶことができます。

建築家・安藤忠雄が設計を担当しており、コンセプトは「いずれ森に覆われる博物館」。コンクリートの打ちっぱなしが特徴の近代的な建物となっています。建物には、光を取り入れるスリット窓があり、光によって見える景色が変わっていくという幻想的な作りになっているところもポイントです。

館内には、横倉山が現在に至るまでの様子がわかる「横倉山の生い立ちコーナー」や、牧野富太郎博士のフィールドワークの様子をまとめた「牧野博士と横倉山コーナー」があります。さらにはトリケラトプスの実物の頭骨化石を始め、世界の代表的な化石を展示している「地球の歴史コーナー」、「自然観察・体験コーナー」など、横倉山を通じて地球の歴史や生物の進化を本物の化石や隕石に触れながら学習することができます。

建物の外には、メタセコイアの樹々が広がっており、11月には紅葉とともに散策を楽しめます。

■「横倉山自然の森博物館」概要
住所:〒781-1303 高知県高岡郡越知町越知丙737番地12
TEL:0889-26-1060
開館時間:9:00〜17:00(最終入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)12月29日〜1月3日
入館料:大人500円 高校・大学生400円 小・中学生200円 ※20名以上で団体100円引き
公式HP:https://www.yokogurayama-museum.jp/

3 2020年春にリニューアルした京都市京セラ美術館 日本庭園でゆったりとした時間を

Photo: Koroda Takeru

京都市・岡崎エリアに1933年に創建された「京都市美術館」は、現存する日本最古の公立美術館建築です。1928年に京都で行われた昭和天皇即位の礼を記念して建築計画が始まりました。2020年春に、建築家・青木淳さんを新館長として迎え、通称「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープン。いわゆる「帝冠様式(ていかんようしき)」とよばれる近代的なビルの上に和風の屋根、という和洋折衷な建築様式が特徴です。

リニューアルを機に、入館料無しで利用できる新館の屋上テラスや日本庭園、ミュージアムショップ、カフェなどふらりと立ち寄りたくなるスポットが新たに登場。特に注目ポイントは、「エントランス」、「新館」の2つです。

Photo: Koroda Takeru

■歴史的建築との美しい融合の「ガラス・リボン」

「エントランス」があるのは、スロープ状の広場「京セラスクエア」。この広場にあるリニューアルのシンボル的存在が、歴史的建築と融合したガラスのファサード「ガラス・リボン」です。これまでの重厚な外観を維持しながら新たなエントランスを地下に新設することで、より美術館へアクセスしやすくなりました。また、メインエントランス、ミュージアムショップやカフェといった美術館の内と外とを繋ぐ場として機能しています。

Photo: Koroda Takeru

■現代美術に対応する新館「東山キューブ」

本館の東側に新しく誕生した新館「東山キューブ」は、現代美術を中心に多ジャンルの作品を紹介する展示空間です。「東山キューブ」の面積は約1000平方メートルで、天井高は5メートル。展示室と収蔵庫、バックオフィス、屋上テラスを備えています。屋上の「東山キューブテラス」からは、雄大な東山を望むことができます。外装のタイルは、その幅を本館のレンガ幅とあわせており、陽の移り変わりによって異なる表情を見せるという特徴があります。

また、新館の「東山キューブ」に位置する日本庭園は、1910年に築造された商品陳列所の庭が前身で、名庭師である7代目小川治兵衛が作庭に関わったとされており、琵琶湖疏水の水を引き入れた池や藤棚のある回遊庭園が広がっています。庭園は現在、365日24時間自由に散策可能。日中はもちろん、雪の降った早朝や夜間にライトアップされた姿も自由に見ることができます。

Photo: Koroda Takeru

■「京都市京セラ美術館/京都市美術館 別館」概要
住所:〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124/京都市左京区岡崎最勝寺町13
TEL:075-771-4334
開館時間:10:00~18:00(展示室への入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始(12月28日〜1月2日)
公式HP:https://kyotocity-kyocera.museum/

4 瀬戸内海に浮かぶアートの島・直島の町並みを活かした空間

The Naoshima Plan「水」 撮影 新建築社写真部

The Naoshima Plan「水」は、香川県香川郡直島町にある建築作品。広島を拠点に活動する建築家・三分一博志が2011年から展開している「The Naoshima Plan」という取り組みの一環で、「瀬戸内国際芸術祭」が開催された2019年から公開されています。三分一氏が2011年から2年半かけて、直島・本村地区の集落や土地で、風や水、太陽などの「動く素材」を調査し、築200年で江戸時代から残る古い家屋を改修して造られました。島民が日々の運営を担っており、島の人と訪問者が交流できるように工夫されています。また、三分一氏は、直島で2013年に「風と水のコクピット」、2015年には多目的施設「直島ホール」と個人住宅「直島の家 – またべえ」を手掛けています。The Naoshima Plan「水」は、直島で4作目となる建築物です。

The Naoshima Plan 「水」では、地下水脈からの豊かな水を湛える水盤を設置。「風」と「水」をテーマにしており、暖簾をくぐると日本庭園的な中の島が浮かぶ池泉がある設計です。そして古民家の中庭には、亀島にも見える石組と植栽による古庭園が残っています。本村地区の家屋は、太陽の動きに合わせた東西の配置で、島の風向きに合わせて、風が抜けるように南北に続き間や縁、庭を設けるレイアウトが特徴だそう。本村地区は昔、海の底にあり、後に海が後退して、室町時代に入り江を干拓してつくられた町です。町には川がなかったため井戸水が貴重で、それぞれの家に井戸がありました。The Naoshima Plan「水」は、その特徴である南北の続き間を顕在化しており、増築した軒下では井戸から流れる水を足水として涼を取ることができます。

The Naoshima Plan「水」は、直島の「動く素材」を目でも肌でも感じることができる憩いの場です。三分一博志は、直島で昔から受け継がれてきた人と自然の営みや、風・水・太陽に代表される「動く素材」を顕在化させ、直島そのもののポテンシャルを引き出し、直島の人々が島の将来を考えるきっかけとなることを目指しています。

The Naoshima Plan「水」 撮影 新建築社写真部

■「The Naoshima Plan『水』」概要
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町本村707
TEL:087-892-3754(福武財団)
開館時間:ベネッセアートサイト直島のサイトをご参照ください
休館日:ベネッセアートサイト直島のサイトをご参照ください
入館料:無料
公式HP:https://benesse-artsite.jp/

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
Shungetsu Nakamura
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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura